フォーマット

最近のPCではハードディスク等が大容量になり、ネットストレージなども使われるようになり、
データの置き場を物理的にイメージしなくなっているので
『フォーマット』というと単に『消去する』という意味を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、『書式』のことをフォーマットと呼ぶように、厳密には『書き込み可能にする』ことを意味します。
単に消去するのと書き込み可能にするのでは、荒地と畑くらいの差があるのではないでしょうか。

たとえば、良くできた書式は何を記入すれば良いかすぐに分かり、
必要な情報を漏れなく書き込む作業に集中できます。
つまり、書式が書かれた紙はただの紙ではなく、
物理で習うところの位置エネルギーのようなものが込められている
と言っていいのかもしれません。
それは空間に置き換えることもできます。さしづめ、

『良くできた(デザインされた)空間では作業に集中できる』

ということでしょうか。
図書館では読書に集中できますし、食堂では食べることに集中できます。
もう少し典型的な例で言うと、選挙の投票所。
ただの体育館等なのですが、適切な配置によりどんな人でも投票作業が滞りなくできるように
場所が作られています。しかも容れ物になる建物に縁らず、全国規模で均質に。

我々の行う設計という行為は、『空間にエネルギーを込めること』と言えるのかもしれません。
無限の可能性を持つゆえに何の方向性も持たない『空間』を、適切に方向付けして『場所』につくりかえる。
その方向付けには用途や趣向や風土・文化、あるいはコストなど、様々なものが盛り込まれます。
その結果、平凡な建物になったり、心地よい建物になったり、その地域独特な建物になったりします。

『フォーマット』という言葉から、だいぶ大風呂敷を広げてしまいました。
『無に帰す』というネガティブな感情が込められがちなこの言葉、実はとてもポジティブな言葉だと思います。

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